オンライン時代の新たなエシカル基準:環境負荷の少ない物流・配送方法を見極める専門ガイド
オンラインショッピングと物流・配送のエシカルな視点
インターネットの普及により、私たちの買い物は大きく変化しました。オンラインで世界中の商品を手軽に購入できるようになり、日々の生活を豊かにしています。一方で、製品そのもののエシカル性だけでなく、それがどのように生産され、どのように私たちの手元に届くのか、サプライチェーン全体に目を向けることの重要性が増しています。特に、オンラインショッピングにおいて不可欠な「物流」と「配送」は、環境や社会に大きな影響を与える要素であり、エシカルな買い物をする上で見過ごせない新たな基準となっています。
この記事では、物流・配送が環境や社会に与える影響を詳細に解説し、企業が行っているエシカルな取り組み事例を紹介します。そして、消費者としてどのように物流・配送のエシカル度を見極め、賢い選択をするための実践的なチェックポイントをご紹介いたします。既にエシカルな買い物を実践されている方が、さらに一歩進んだ知識を得るための一助となれば幸いです。
物流・配送が環境に与える影響
物流・配送は、製品の生産から消費、そして廃棄・再利用に至るまでの過程で、エネルギー消費や環境負荷に大きく関わります。主な影響として、以下の点が挙げられます。
輸送に伴う排出ガス
製品を運ぶ車両(トラック、航空機、船舶、鉄道など)は、燃料を消費し、二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガスや大気汚染物質を排出します。輸送モードによって排出量は大きく異なり、一般的に航空輸送は単位重量・距離あたりの排出量が最も多く、次いでトラック、鉄道、船舶の順で環境負荷が低減するとされています。特に「ラストマイル配送」と呼ばれる、物流拠点から最終消費者へ荷物を届ける最終区間は、都市部での小口配送が多く、交通渋滞による非効率な運行や、頻繁な停車・発進による排出ガス増加が課題となります。
梱包資材と廃棄物
オンラインショッピングでは、製品保護のために多くの梱包材が使用されます。段ボール、プラスチック緩衝材、テープなどがその代表例です。これらの梱包材の生産、使用、そして廃棄・リサイクルの過程で環境負荷が発生します。特に、過剰な包装やリサイクルが困難な素材の使用は、廃棄物問題の一因となります。
返品(逆物流)の影響
オンライン購入では、サイズ違いやイメージ違いなどによる返品が発生しやすい傾向があります。返品された商品を処理するためには、再度輸送や梱包、検査などのプロセスが必要となり、新たな環境負荷が発生します。
物流・配送が社会に与える影響
環境問題に加え、物流・配送は社会的な側面でも影響を及ぼします。
労働環境
物流を支える労働者、特にドライバーの労働環境は重要な社会問題です。長時間労働、低賃金、労働災害のリスクなどが指摘されており、持続可能な物流には、これらの労働環境の改善が不可欠です。
地域社会への影響
輸送車両の増加は、交通渋滞、騒音、振動、事故のリスクなどを増大させ、地域住民の生活環境に影響を与える可能性があります。また、物流施設の建設や運用が地域の景観や生態系に影響を与えることも考慮する必要があります。
企業が行うエシカルな物流・配送の取り組み事例
環境・社会課題に対する意識の高まりを受け、多くの企業が物流・配送プロセスのエシカル化に取り組んでいます。主な取り組み事例は以下の通りです。
- 輸送効率の改善: 共同配送の推進、積載率の向上、最適な配送ルートのAIによる分析・設定などにより、輸送回数や走行距離を削減します。
- 低環境負荷輸送モードの導入: 電気自動車(EV)トラック、燃料電池車(FCV)、自転車、ドローンなどの活用、鉄道や船舶へのモーダルシフト(輸送手段の転換)を進めます。
- 環境配慮型梱包材への転換: 脱プラスチック、リサイクル素材やFSC認証紙の使用、簡易包装の推進、繰り返し使えるコンテナや袋の導入などを行います。
- 再生可能エネルギーの活用: 物流施設で使用する電力を再生可能エネルギーで賄う、EV充電設備を再生可能エネルギーで運用するなど、事業活動全体での脱炭素化を目指します。
- 労働環境の改善: 適正な労働時間管理、安全教育の徹底、福利厚生の充実など、ドライバーを含む物流労働者の待遇改善に取り組みます。
- 透明性の向上: 物流網全体でのCO2排出量の可視化、サプライヤーへの環境・社会基準の適用、サステナビリティレポートでの情報開示などを進めます。
これらの取り組みは、企業のウェブサイト、サステナビリティレポート、CSR報告書などで確認できる場合があります。
消費者としてエシカルな物流・配送を見極める実践ガイド
私たち消費者は、日々の買い物を通して、エシカルな物流・配送を推進する企業を支援することができます。以下のチェックポイントを参考に、オンラインショッピングにおける選択を検討してみてください。
1. 企業の物流・配送に関する方針や取り組みを確認する
購入を検討している企業のウェブサイトやサステナビリティ関連ページを確認しましょう。以下の情報が掲載されているか、どのような具体的な取り組みを行っているかに注目します。
- 環境目標: CO2排出量削減目標や、低環境負荷輸送モード導入計画の有無。
- 梱包材方針: 脱プラスチック、簡易包装、リサイクル素材などの使用に関する方針。
- 労働環境: 物流パートナーを含む労働環境への配慮や改善への取り組み。
- 情報開示: 物流関連の環境・社会影響に関するデータや取り組みの透明性。
特に、具体的な数値目標や第三者機関による認証・評価(例:特定の環境マネジメントシステム認証)がある場合は、より信頼性の高い情報と判断できます。
2. 配送オプションの影響を理解する
オンラインストアによっては、配送方法や日時に関するオプションを選択できる場合があります。それぞれの選択肢が持つ環境負荷を理解し、可能な範囲で負荷の少ない選択を心がけます。
- 配送速度: 即日配送や翌日配送は、個別配送となりやすく、積載率が低い状態での配送や、配送ルートの非効率化を招く可能性があります。数日程度の余裕を持った配送は、他のお客様の荷物とまとめて配送されやすくなるため、輸送効率が向上する可能性があります。
- 配送日時指定: 細かい時間指定や再配達の発生は、配送車両の走行距離増加や待機時間の発生につながることがあります。可能な範囲で、配送業者にとって効率の良い日時を指定するか、指定をしないことで柔軟な配送を促すことも一つの方法です。
- 受取方法: 自宅での受け取りだけでなく、コンビニエンスストアや宅配便ロッカーでの受け取り、または店舗での受け取り(クリック&コレクト)が選択できる場合があります。これらの方法は、再配達の削減や、消費者が直接取りに行くことでラストマイル配送の効率化に繋がる可能性があります。ただし、消費者が店舗等へ移動する際の環境負荷も考慮が必要です。
3. 過剰な返品を避ける
前述の通り、返品は新たな物流プロセスと環境負荷を発生させます。購入前に商品のサイズや仕様をよく確認し、不必要な返品を避けることも、エシカルな物流に貢献する行動です。
4. 環境配慮型梱包材に注目する
届いた商品の梱包材を確認し、環境負荷の少ない素材(脱プラスチック、再生紙など)が使用されているかを評価するのも良いでしょう。また、適切に分別・リサイクルを行うことも重要です。企業によっては、梱包材の選択肢を提供したり、簡易包装を推奨したりしています。
まとめ
製品そのもののエシカル性に加えて、物流・配送プロセスにまで目を向けることは、オンラインショッピングが主流となった現代における、より包括的なエシカル消費の実践です。物流・配送が環境や社会に与える影響を理解し、企業の取り組みを評価すること、そして自身の購入行動における配送オプションを意識することが、エシカルな物流を推進する力となります。
企業が物流・配送の透明性を高め、よりエシカルな手法を導入することを促すためにも、消費者一人ひとりが意識を持ち、情報を探し、賢い選択を積み重ねていくことが重要です。この記事が、皆様のエシカルな買い物における、物流・配送に関する新たなチェックリストとして役立つことを願っております。